健康食品・サプリメントの基礎知識(1)医薬品と健康食品・サプリメントとの違いは何か。

健康食品・サプリメントの基礎知識を整理しました。(その1)医薬品と健康食品・サプリメントとの違いは何か。

テレビでもインターネットでも特定保健用食品(トクホ)などの健康食品・サプリメントなどが花盛りです。でも医薬品と食品との区別はわかりにくくなりました。食品のグループに医薬品のような保健機能食品が加わり健康食品の分類が増えました。もともとサプリメントは 医薬品でなく、ビタミンやカルシウムなど特定の成分を濃縮した錠剤類と定義されています。健康食品もサプリメントも法律上の定義はなく、医薬品のような形態をしていますが、健康食品に分類される食品で、健康の維持増進のために摂取する食品にすぎません。誤解を生むような広告、エビデンス(証拠)が疑わしい商品なども多数あります。本当に役に立つ健康食品やサプリメントの正しい選び方、使用法などを整理し上手に付き合っていく方法を検証します。

 (テーマ1) 医薬品と健康食品・サプリメントとの違いは何か。

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 ◆ 医薬品と健康食品との違いをきちんと理解する。

 医薬品と健康食品は口にするものという点では同じですが、本質的には全く異なるものと言えるでしょう。医薬品は薬事法という厳しい法律によって製造できる会社や製造工程は規制され、食品のように届け出ひとつで製造できるものとは違います。医薬品は効果が検証されていますが、使い方を誤ると健康を害するリスクがありますから、管理・提供できる資格も医師・薬剤師に限られます。食品には食品衛生法などの法律はありますが、製造や販売に関しては特別な資格を必要とするわけではありません。病気の治療や予防に用いられる「医薬品」「医薬部外品」と、あくまでも「食品」であるトクホなど健康食品とは[図1]のように重なり合う部分はありません。

 健康食品という分類は法的な定義はなく、一般に「健康によい、健康の保持・増進に役立つ」とされる単なる食品でしかありません。サプリメントも同様に明確な定義はありませんが、医薬品によく似た形状の錠剤やカプセルは、見た目や形状から薬と同じように効果があるように勘違いします。健康食品はあくまでも食品です。トクホの表示にも「食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを。」と記載されていますが、基本はバランスのよい食事であることを押さえておく必要があります。健康食品を摂取するならあくまで補助的な栄養補給と考えることが大切です。もしどこか体の具合が悪いのであれば健康食品に頼るのではなく、医師の診察や医薬品の処方が必要になると考えることが正しい判断です。健康食品やサプリメントは医薬品とは本質的に別物であることを前提に理解を深めてください。

 ◆健康食品に分類される保健機能食品を理解する。

  医薬品ではない食品という大分類のなかに健康食品があります。健康食品のなかでも健康の保持・増進に役立つ機能性表示が可能なものを保健機能食品と呼びます。保健機能食品には特定保健用食品、機能性表示食品、栄養機能食品の3つの分類があります。それぞれ機能性の表示が可能ですが、表示内容の根拠に関する信頼性のレベルが違います。健康食品をここまで複雑に分類してしまったところに誤解の原因があるように思います。

 これら以外にあまりなじみはないと思いますが、特別用途食品という分類もあります。これはトクホのように国の認可を必要とする食品で、病気の人や乳児、妊産婦など、医学・栄養学的に特別な配慮が必要な人に適する旨の表示が認められている食品です。また特定の食物アレルギーを持つ人のためのアレルゲン除去食品などがあります。

 ◆ 特定保健用食品とは。

  特定保健食品とは、国が審査して表示を許可する保健機能食品です。一般的な呼び名は「トクホ」、特定の保健効果が期待できると表示することが国に認められている食品を指します。体の生理的機能などに影響を与える成分(関与成分)が適切に含まれているか、有効性と安全性の解釈に問題がないか、個別の製品ごとに国が審査して表示を許可します。トクホの認定を受けると科学的なデータに基づき効果を表示することが可能になります。トクホで「おなかの調子を整える」「虫歯の原因になりにくい」などの文言は根拠となるエビデンス(証拠)があります。消費者庁承認とした丸に人型のトクホマークの使用が認められます。

 ◆ 機能性表示食品とは。

  一般には特定保健食品と区別することは難しいですが、機能性表示食品は消費者庁に届け出だけでよく、国の審査不要という点が異なります。トクホとの明確な違いは製品ごとに国の審査を受ける必要はなく、安全性や機能性の根拠に関する情報を消費者庁に届け出るだけです。すなわち安全性と有効性の国によるお墨付きはありませんから申請事業者の責任になります。機能性表示食品は加工食品だけでなく、生鮮食品も対象になっているのが特徴です。機能性表示食品にはニックネームはありませんがあえて言えば「キノヒ」でしょうか。トクホのように規定のロゴマークはなく機能性表示商品と枠囲いで表示し届出番号を併記します。

 ◆ 栄養機能食品とは。

  国の審査も届け出も不要なのが栄養機能食品です。安全性の責任は企業にあり、有効性の根拠も不明です。ただ栄養機能食品は不足した栄養成分を補給するために利用する食品であり、国が定めた規格基準に適合していることで表示することが可能となります。表示の対象となる栄養機能はミネラルの6種類、ビタミン13種類、n-3系脂肪酸の合計20種類に限定されています。トクホのように規定のロゴマークはなく栄養機能食品と枠囲いで表示します。届出も不要ですから届出番号もありません。ニックネームはありませんがあえて言えば「エイキ」でしょうか。一番大きな差はトクホ以外のキノヒもエイキも安全性や有効性を国が保証しない事業者責任です。

 ◆ いわゆる健康食品とは。

  健康食品といわれるカテゴリーのなかで保健機能食品(特定保健用食品/機能性表示食品/栄養機能食品)でないものを単に健康食品とかサプリメントと呼んでいます。いわゆる健康食品のなかには「栄養補助食品」とか「健康補助食品」のようにさも特別な機能を有するような誤解を生む表現も見かけます。これらのいわゆる健康食品は健康の保持・増進に役立つ食品としてイメージ広告先行で販売されていますが、安全性や有効性については根拠が薄弱です。もちろん規定のマークなどもありませんから事業者任せの基準なしです。機能性表示食品の制度が始まり、エビデンスを提示可能な一定の健康食品が機能性表示食品のカテゴリーに移行しました。いわゆる健康食品に意味がないと言うことではなく、自己責任で表示をよく確認して摂取されることが大切です。

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 賢く付き合うチェックシート

 □医薬品と同等の効果を期待していないか。

□対象となる健康食品はどのカテゴリーか表示を確認したか。

□本当に摂取が必要か、食事等でカバーできないか検討したか。

□健康食品ではなく医師の診断を必要とする病状は見られないか。

 図表23種類の保健機能食品と健康食品の比較表

分類特定保健用食品(トクホ)機能性表示食品(キノヒ)栄養機能食品(エイキ)いわゆる健康食品(健康補助食品、栄養補助食品)
特徴企業より出されたデータを国がすべて審査した上で、消費者庁長官が許可。事業者の責任において有効性、安全性を評価し、事前に消費者庁へ届出。指定のいずれかの栄養成分を国が定めた範囲内に含んでいれば機能を表示可。健康の保持・増進に役立つ食品として販売・利用されるが定義はない。
安全性国が審査。事業者の責任。製品の安全性は企業責任。根拠が不明。
有効性国が審査。事業者の責任。指定成分の科学的根拠は認知されているが、製品としては不明。根拠が不明。
表示消費者庁長官承認の人形トクホマークを使用可。「機能性表示食品」と届出番号を表示、規定のマークなし。
「栄養機能食品」と表示、規定のマークなし。規定のマークなどはなし。
 

参考:消費者庁資料、FPジャーナル2018/8月号

画像:acworksさんによる写真ACからの写真